about HeAL HeAL JAPAN Initiative

HeALとは、Healthy Active Livesの略で、
HeaL JAPAN Initiative(ヒール・ジャパン・イニシアティブ)は
精神疾患患者の「身体的健康」向上を目的とした
2014年11月に発足した任意団体です。

Healthy Active Lives (HeAL) 健康でイキイキとした生活
〜精神疾患を持つ若者の身体に目を向ける〜

コンセプト


index

こんな世界を実現したい
はじめに
当事者たちは言っています…
挑 戦
私たちの目標
重要な諸原則
可能にするためのプロセス
今後5年間の目標

 

こんな世界を実現したい…

● 精神疾患を経験している若者が、精神疾患を経験していない仲間たちと同等の平均寿命と人生への期待を持てる。

● 精神疾患を経験している若者、そのご家族や支援者らが、身体的健康を保つための方法、ならびに治療にともなうリスクを最小限にするための方法について知り、継続的に支援される。

● 精神疾患を経験している若者、そのご家族や支援者らによって表される精神疾患治療薬の副作用に関する心配が尊重され、治療選択についての情報が提供される。

● 保健医療専門職やそれらの団体は、精神疾患を経験している若者の身体的健康を守り保持するために一致団結して取り組む。

● 治療の開始時点から、健康的な栄養摂取や食事、身体を使った目的のある活動、タバコ使用の低減に焦点があてられ、健康で活発な生活が常に促される。


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はじめに
 

 一般人口と比較すると、精神疾患を経験している若者は、天寿をまっとうする前に、心血管疾患、肥満や糖尿病などの代謝系疾患、慢性閉塞性肺疾患、種々のがん、感染症によって早く死亡することが多いのです。

 必ずしも命を脅かすわけではありませんが、性機能障害、骨粗しよう症、虫歯、といった状態も精神疾患を経験している若者により多くみられ、それらによって苦痛がもたらされることにより、社会的に孤立しやすくなります。
 自殺よりも多い早死の最大かつ単独の原因は心血管疾患です。喫煙や体重増加、代謝制御に関する不良な変化が高率に合併することがその理由です。これらの問題は、治療にともなう副作用、精神疾患性疾患そのものの特性、社会的困窮、単に不十分で差別的なヘルスケア、によって説明されます。
 きわめて重要なのは、これらの変化が精神疾患の経過の早い段階から生じていることから、諸問題に予防的に取り組むための新しい機会がもたらされるということです。早期精神疾患宣言(Bertolote & McGorry, 2005)|は、決定的な意味を持つ早期段階での支援と治療の提供の重要性を強調しています。これらの目標が身体的健康を含めたものに拡張されていくことが「健康で活発な生活(HeAL)宣言」の目的です。この宣言は、一連の重要な原則、プロセス、基準についての国際的合意を反映しています。
 HeALの大志を達成するためには、精神疾患を経験している若者、そのご家族や支援者らと私たちとの協働のあり方を変化させていくための取り組みが必要です。リカバリーのプロセスの欠くことのできないー部として、彼らが健康で活発な生活を楽しむことをエンパワーするために。

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当事者たちは言っています…
 

 精神保健システムは、当事者の精神と身体の両面の健康を回復するために必要なツールを提供しなければなりません。そのためには、当事者が自分自身のウェル・ビーイング(wellbeing)に対して責任を保持できるようにエンパワーされることが必要です。
 当事者は、自分のリカバリーの道程において、良好な身体的健康を保持するための教育と支援を必要としています。特に、栄養摂取や禁煙、身体的活動の領域の教育と支援が必要です。良い気分でいるためにもです。

「精神的健康の障害を抱えている若者たちが、ただ存在しているということではなく、喜びや情熱、熱中をともなった生活を送るために、精神的または身体的なサポートは決定的に重要な意味を持ちます。 」

「身体的健康を改善することによって当事者の精神的建康は改善され、またそれによってさらに身体的健康も改善されています。だからそれはその二つが強くつながっていると思います。」
 「歳をとってもかっこよくいたいのは当然だけど、それだけでなく、良い気分でいたい。」

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挑 戦

精神疾患を経験している若者たちは、精神疾患を経験していない仲間たちと比べ、多くの予防しうる健康格差に直面しています。

● およそ15~20年短い寿命

● 心血管疾患を2~3倍抱えやすくなる。そのため、心血管疾患は予防しうる早死の単独かつ最大の原因となっている(自殺を上回る)。

● 40歳までに代謝系の合併症(メタボリックシンドローム)を2~3倍抱えやすくなる。それゆえに心血管代謝系の疾患を発症するより大きなリスクを抱える。

● 生涯において二型糖尿病を2~3倍抱えやすくなる。

● 3~4倍喫煙者になりやすい(精神疾患の初回診断時までに59%がすでに煙草を常用している)。

● 抗精神疾患薬による治療開始後の数週間以内の顕著な体重増加と代謝系の変化。  ーー多くの抗精神疾患薬は体重増加を起こしうる  ーー約半数が、療開始後1年間で当初に比べ7%以上体重増加する(薬剤選択により異なる)

● 体重増加や不良な身体的健康の結果としての自尊心の喪失、低いQOL、そして追加的なスティグマと社会的排除。

しかしながら、多くの人々がこれら予防可能な健康格差の原因に対する介入を得られていない。

● 心血管代謝系のリスクファクターに関する断続的で不十分なモニタリング。医療提供者の目にはリスクファクターが明らかであるにもかかわらず、それらへの治療がなされない。

 
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私たちの目標

● 精神疾患を経験している若者たちが健康でイキイキとした生活を送るのを妨げるスティグマ、差別、偏見を撲滅する。

● 精神疾患を経験している若者たちは健康でイキイキとした生活を成しえる、という希望と楽観をうみだす専門家の姿勢を促すことにより、不良な身体的健康は避けられない、という認識に対して積極的に立ち向かう。

● ご家族と連携しつつ、若者が自らの治療に責任を持てるよう支援するために、支援を受けつつも若者自ら意思決定を行うプロセスを強化する。

● リカバリーを達成するうえで、禁煙や定期的な運動、健康的な食事、体重増加の予防などポジティブな身体的健康アウトカムが精神的健康アウトカムと同等に価値あるものであることを保証する。

● 専門家やかかりつけ医が精神疾患を経験している若者たちの肥満や心血管疾患、糖尿病の発症リスクを減らすために協働することを奨励する。

● 仮にリスクファクターが進展・進行している場合には、少なくとも精神疾患を経験していない仲間が受けられるのと同等のレベルの効果的な身体医療にアクセスできることを保証する。

● 身体的wellbeingへの道筋が記述されたサービスユーザーの個別の報告を作成し、集積することを呼びかける。

● 体重増加、心血管疾患、糖尿病を予防する効果的な方法の根拠基盤の構築に関する研究の優先度を高める。

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重要な諸原則


精神疾患初回エピソードを経験している若者として、精神疾患当事者は以下の多くの権利を持っています。

当事者は、精神疾患、または、ケアや治療の結果として、当事者の保持している身体的健康を失うベきではありません。

当事者は、健康的でイキイキとした生活を目指す権利を持っています。

当事者は、精神疾患を経験していない仲間たちと同様に、良好な身体的健康とヘルスケアを期待します。

当事者やそのご家族、当事者への支援らは、当事者の身体的健康に影響を与える治療選択についての責任を持つために、尊重され、情報を提供され、援助されます。

当事者は、メンタルヘルス上の問題を理由に、身体的健康において差別されたり、不利な立場に置かれたりしません。

当事者は、身体的健康と精神的健康のアウトカムに等しく価値が置かれ、支援されるケアを期待します。

当事者は、治療の開始時点から、当事者のヘルスケアの基本的要素として、肥満や循環器疾患、糖尿病になるリスクを最小限にするために援助されます。

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可能にするためのプロセス


サービスを使う人々の体験に価値を置き、サービスの設計、改良、質的保証においてサービスを使う人々を巻き込む。

精神疾患の診断の時点から、定期的かつ継続的に、肥満、心血管疾患、糖尿病へと発展するリスクファクターをモニターし記録する。

精神疾患治療薬剤が身体的健康にもたらす合併症を最小限にする。
 ーー低用量処方、多剤併用回避、よりリスクの低い抗精神疾患薬へのスイッチングをすすめる。
 ーー生活習慣への働きかけを行う。必要であれば、体重増加を予防するためのエピデンスに基づく薬理学的介入(例:metformin)を提供する。
 ーー用量を減らすことや、適切な場合には抗精神疾患薬を使用しない治療を慎重に試みることを含めて、現状の薬物療法の必要性についてレピューする。

かかりつけ医、また必要に応じて身体領域の専門医との連携によって、有害な心血管代謝系のリスクに対するエビデンスに基づく介入を提供する。

不良な身体的健康につながる社会的決定要因に焦点をあてる;例えば、不良な住環境、失業、料理技術の不足、食糧や健康プログラムへの限られた予算。

監査や職能開発を通じて、サービスが身体的健康と精神的健康に対して等しい優先度を与えることを可能とするための方法を示す。

若者が健康でイキイキとした生活を達成することを支援するために、地域ベースの組織が身体的健康のプロモーションを提供し、そして対象を定めた早期介入をすすめるためのインセンティブと支援を構築する。

サービス利用者やケアラーの視点に由来する革新的なリカバリー志向アプローチを含んだ身体的健康改善のための実践プログラムを構築し、研究を実施する。

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今後5年間の目標  

 今後5年以内に、精神疾患を発症するすべての若者が、初回診断から2年後のアセスメント時点で、彼らの将来発症する身体的健康に対する合併症のリスク(特に、肥満、心血管疾患、糖尿病)が彼らと同様のバックグランドを持った精神疾患を経験していない仲間たちと同程度に見込まれるという状況を実現すべきである。

1. 精神疾患初回工ピソードを経験している人々、そのご家族、支援者らの90%が、将来的な肥満や心血管疾患、糖尿病のリスクの理解について情報を提供され、そのうえで治療の選択について判断できたと満足する。  

2. 治療開始後1か月以内に、精神疾患初回エピソードを経験している人々の90%が、肥満や心血管疾患、糖尿病の将来的なリスク等をまとめたアセスメントの記録を保持するようにする。 ーBMIかつ/またはウェスト周り;血中グルコース、脂質プロフィール、血圧、喫煙状況、家族歴 ー治療に携わる専門家の間で検査結果が共有される(例;かかりつけ医と専門医)  

3. 精神疾患初回工ピソードを経験しているすべての人々が、精神疾患治療のために薬剤が使用される場合、肥満や心血管疾患、糖尿病の合併を量小限にするために推奨される処方基準に基づいて、定期的なレビューがなされることが期待できる。  

4. 精神疾患初回工ピソードを経験している人々の75%が、抗精神疾患薬による治療開始後2年経過した時点で、病気になる以前の体重の7%以内の体重増加にとどまっている。  

5. 精神疾患初回工ピソードを経験している人々の75%が、抗精神疾患薬による治療開始後2年経過した時点で、血中グルコース、脂質プロフィール、血圧が正常範囲内で維持されている。  

6.精神疾患発症後2年経過した時点で、身体的健康の格差が縮小している。
 ーー90%が、健康的な食事、煙草や薬物使用、セクシャルヘルス、口腔ケア、運動不足を回避することの利益、に関する健康推進の助言を受ける。
 ーーマイナス30%以下の喫煙率  
 ーー50%が年齢相応の運動をしている。 (例:1週間当たり最低150分の適度な運動)

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